都への要望書 第一号

都立和田堀公園の
自然環境とカワセミを守る会

要望書

2014年5月30日 東京都建設局第三建設事務所 所長 東野様

 

近年、雨水が浸透できる土や樹木の減少に伴い、豪雨時に大量の水が一気に河に流れ込み、氾濫するという現象が十数年に一度の割合で起きています。善福寺川沿いでは、広い範囲で住民の家と生活を守るため大掛かりな河川工事が行われてきました。住民への被害軽減のための工事は理解できますし、これを進めていくことの意義も否めません。
が、しかし、もう一方では、都内でも類をみない自然環境とそこに住む生物、野鳥、また、この素晴らしい緑を心の拠り所としている公園利用者にとって無視のできない環境破壊が
起きていることも確かです。下記にその状況を書き下ろしましたので、工事を進めていく上での御配慮、御検討を切にお願いするしだいです。

1. 遺跡と聖地の森

950年の歴史のある大宮八幡の北側と和田堀公園の間を流れる河の区域周辺は、歴史的希少価値があるのみならず、そこで発見されてた弥生時代の古墳や遺跡からも察することができるように、古代から神仏の加護を念じた豊かな森がありました。ここは、善福寺川沿いでも唯一手つかずの自然が残っている貴重な場所で、極めて珍しい動植物が数多く見つかっているだけなく、両腕では抱えきれない程のケヤキやクスノキ、イチョウ、クロマツ、サクラ、それに珍しいイイギリ等、「長老」とも呼べる樹木が多く存在する場所でもあります。

しかし、昨年から始まった護岸工事に伴い、工事用の資材の置き場確保やクレーンの移動に障害を来す、という名目で、既にこれらの木々が見るも無惨に何十本も伐採、剪定され、その数はさらに増えることになります。
(宮下橋下流堰の工事伐採・剪定60本、宮下橋上流101工事伐採・剪定68本、宮下橋上流102工事伐採・剪定予定43本。伐採・剪定計165本。情報提供:東京都建設局第三建設事務所)

2. 珍しいカワセミのすみか

この一帯が格別な理由の一つに、大宮八幡側の土崖があげられます。根っこが張り出し、大きくせり出している樹木もあり、一見危険そうにも見える土手ですが、大地震の時も、崩れること無く、根が土をしっかりと支えていました。実は、これこそが、カワセミのすみかなのです。カワセミは木の上ではなく、土に巣穴を作る習性があります。我々が特に河川工事に対し危機感を覚えるのは、この土崖が計画どおりに壊され、鉄板で覆われ、そこに歩道が造られれば、カワセミは二度とこの場所には戻りません。 今年は、カワセミのつがいが、4羽のひなを孵し、今日も親鳥が餌を運び、羽ばたきの練習に勤しんでいました。公園内にある和田堀池(通称ひょうたん池)の周りには、連日、その可憐な姿を見るのを楽しみ多くの人が集まっています。

3. 多様性を育む貴重な環境

カワセミの他にも、多くの野鳥がここでは見られます。カイツブリ、オオルリ、アオサギ、ゴイサギ、シラサギ、コゲラ、キビタキ、ウソ、カルガモ、マガモ、シロハラ、ツグミ、サンコウチョウ、キクイタダキ、ウグイス、セキレイ、オシドリ。これほど多種多様の鳥が集まるのは、河、池、そして身を隠すことのできる高く枝を張った樹木、という3拍子揃った格別な条件があるからです。木の上、茂みの中、川縁の砂利の上、すかすかになった老木の穴の中、水上と、それぞれの生き物がそれぞれの場所で安心して巣作り、餌取り、子育てができる混成林があればこそ、この豊かで多種多様な生命体が存在することが出来るのです。この環境が脅かされれば、この地に鳥が戻るまで、何年も掛かることになり、場合によっては、戻って来ないでしょう。現に、今年は、カイツブリの姿は、一度も目撃されていませんし、工事が進められている川縁では、子育てするカモ達の姿もありませんでした。

4 善福寺川整備工事その102と103の見直しについて

最後に、護岸工事が決定された時点で想定されていなかった東北大震災の復興復旧事業と2020年に行われる東京オリンピックの双方に要する莫大な人材と予算を踏まえ、御供米橋までの102、103工事、さらに、カワセミが生育する土崖撤去の工事を行う前に、以下を要望いたします:

1)  これまでの護岸工事(101工事)の精査
2)  再度、環境アセスメントを行う
3)  せめて、多くの生命体を育む善福寺川沿いで   最も自然が豊なこの和田堀公園区間を、工事の対象から外せないか検討

長い歴史を生き抜いて来た樹木を守り、

豊かな自然を次世代の東京都民にも残せるよう、是非お力をお貸しください。

取り返しのつかない環境破壊が起こる前に。

 

参考情報:
http://www.ule.co.jp/method01.htm
http://kids.gakken.co.jp/box/nazenani/pdf/16_tiri/X1170053.pdf
われわれの生命財産を守るために行う河川改修は、一方で多くの問題を抱えている。従来のコンクリート三面張りに代表される「固い川」づくりは、動植物へのインパクト(打撃)が大きいばかりではなく、親水性の悪化、ランドシャフトの貧困化、環境への大きな負荷、水質悪化、土砂硫化のバランスが崩れ、改修にかかるコストアップなどを招き、さらには下流の水害危険性をも逆に増大させてしまった。
[山脇 正俊:近自然学, p.95]